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「最も単純な体の脊索動物」オタマボヤの遺伝子発現をカバーしたデータベースを構築【生物学プログラム・小沼健准教授】

生物学プログラム・小沼健准教授(専門:発生生物学)らの研究グループは、大阪大学 大学院理学研究科のKai Wang博士 西田宏記教授、沖縄科学技術大学院大学のNicholas M. Luscombe 博士、須山律子博士(現・大阪大学生命機能科学科)、およびゲノム支援(東京大学 鈴木穣教授、国立遺伝学研究所 豊田敦教授らの研究グループ)らを中心とした共同研究によって、脊索動物ワカレオタマボヤ(以下、オタマボヤ)について、卵から大人の体になるまでの13の発生過程をカバーしたRNA-seq解析を実施し、卵から大人の体が出来上がるまでに、18,000あまりの遺伝子がいつ発現するかを網羅したデータベースを構築しました。このデータベースは、尾索動物のデータベースであるAniSeed (URL:https://aniseed.fr/)に公開しており、どなたでも利用が可能です。

 

 オタマボヤの姉妹群であるホヤでは、胚の各細胞において働く遺伝子の詳細、すなわち遺伝子ネットワークが詳細に調べられています。オタマボヤはホヤと比べてもより単純な体と早い発生スピードをもつことがわかっていましたが(図)、今回の研究により、その分子レベルの実体が分かってきました。例えば、ホヤの初期胚発生で働く転写調節因子のうち半分以下しかオタマボヤでは保存されていないことや、胚の植物半球の後側に母性mRNAが局在して体の向きを決める仕組みがホヤとは異なることがわかりました。詳細は、本学のプレスリリースをご覧ください。

 

 オタマボヤは私たちヒトと共通なオタマジャクシ型発生をする脊索動物に属しますが、海水を汲むだけで集めることができること、研究室での継代飼育が可能なこと、世代時間がわずか5日と短いこと、わずか10時間で大人と同じ体が出来上がることなど、「最も単純な体の脊索動物」と位置付けられます。今回、遺伝子発現についての基盤情報を構築したことで、この新しい実験動物を活用した形づくりや発生の理解がさらに進むことが期待できます。

 

 この研究成果は、英国の科学雑誌 「Development」誌 (The Company of Biologists 社)に掲載されました (2023 年3 月18 日オンライン掲載)。また4月22日付けの南日本新聞に紹介記事が掲載されました。

 

掲載論文:Wang K, Suyama R, Mizutani N, Matsuo M, Peng Y, Seki M, Suzuki Y, Luscombe NM, Dantec C, Lemaire P, Toyoda A, Nishida H, and Onuma TA* (2025) 
Transcriptomes of a fast-developing chordate uncover drastic differences in transcription factors and localised maternal RNA composition compared with those of ascidians
Development. 152(6):DEV202666.
doi: 10.1242/dev.202666.

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