この研究は、鹿児島大学の上野大輔准教授とホフストラ大学 (米国) のChristopher B. Boyko教授らによる国際研究チームにより行われました。今回、与論島の海岸から発見、報告された以下2種の甲殻類は、いずれも陸上に暮らすダンゴムシやフナムシなどに近い仲間ですが、カニに寄生する特殊な生態を示します。
1種は日本初記録種でカニヤドリエビヤドリムシと命名され、もう1種は新属新種でユンヌカニヤドリムシと命名されました。成果は、日本甲殻類学会の英文雑誌「Crustacean Research (クラスタシアン・リサーチ)」のオンライン版にて、2020年11月6日付けで発表されました。
鹿児島大学理学部では、30年以上与論島で野外実習を実施しています。今回報告した2種は、実習中に学生が採集したカニから発見されました。オオイワガニ、イボショウジンガ二は共に南日本の磯で普通に見られ、いわば誰でも採集できるカニです(岩の上を素早く走る大きなカニ)。古くから研究されており、新種や初記録となる寄生生物が発見されるのは大変珍しい事です。そのため、今回発見された2種は、限られた海域に分布する希少な種である可能性があり、与論島の自然の豊かさの一端を象徴する発見と言えます。
カニヤドリエビヤドリムシが寄生したオオイワガニ
ユンヌカニヤドリムシが寄生したイボショウジンガニ
カニヤドリエビヤドリムシの雌(左) と雄 (中央), そしてユンヌカニヤドリムシの雌 (右)