教授九町健一
Kenichi Kucho
地球上には1千万種もの生物が存在すると言われています。各生物は、多様な性質や能力(形質)を持ち、それぞれの形質は複数の遺伝子の働きによって成り立ちます。このことは、地球上には膨大な数の遺伝子が存在することを意味します。遺伝子を実験室で自由に扱えるようになってまだ50年程度なので、未知の遺伝子は数多くあります。
僕は、そのような未知の新しい遺伝子を見つけることに興味があります。遺伝子の発見には、分子遺伝学という方法を用いています。この方法ではまず、自分が着目する形質が損なわれた変異体を単離します。変異体ではその形質に必要な遺伝子が変異しているはずなので、染色体DNAの中からそのような変異遺伝子を見つけます。
現在は、フランキアという糸状細菌の窒素固定に関わる遺伝子を研究しています。窒素固定とは、大気中の窒素ガスからアンモニア(植物や微生物の養分)を合成する反応です。多くの窒素固定細菌は、酸素が非常に少ない環境でしか窒素固定を行えません。しかし、フランキアは特殊な球状の構造体を発達させて大気中(酸素濃度20%)でも効率的に窒素固定を行えます。
変異体の単離やDNAを扱う実験は、細かくて根気のいる仕事です。また実験をうまく進めるためには、実験器具や環境を整理整頓することもとても大切です。受験勉強だけではなくて、部屋の掃除や洗い物の手伝いなどもきちんとやっておくことをおすすめします。
鹿児島県の種子島で生まれました。高校までは鹿児島で過ごし、京都大学農学部に進みました。そこで修士課程まで進んだ後、企業に就職しました。1年くらい働いたのですが、合わないと感じて退職しました。退職後の進路はかなり悩んだのですが、博士課程に入って研究の道に入りました。その後、名古屋大学で研究員をした後、鹿児島大学に採用されました。この間、研究テーマは4回変わっています。というわけで、申し訳ないのですが、幼少からの夢を努力してかなえた、という一般に望ましいとされる人生を歩んできたわけではありません。夢や目標がなくても、その時やるべきことを淡々とそれなりのレベルでこなし続けることが大事、というのが個人的な実感です。